吉崎達彦先生のブログ

吉崎達彦(かんべえ)先生のブログ コピペ

<4月19日>(日)

〇アメリカの医療制度について調べていたら、昔、リーマンショックのころに散々お世話になり、ネタ元とさせていただいたこのブログがまだ続いていることに気が付いた。いやー、助かります。改めてご紹介。

●The Gateway to the US Labor Market

〇以前はGMやフォードのレガシーコストがどうなっているか、労組対策はどうするのか、オバマの景気対策の中身は、なんてことを教わったものです。今日の関心事は、なんといってもコロナ対策と医療制度ですよね。今回の緊急経済対策2兆ドルの一部でカバーされてはいるのだけれども、他方では共和党が「オバマケア廃止」を唱えている手前もあって、「無保険者を減らす」という方向には動いていないのですね。

〇他方、民主党側は党内予備選でさんざん「国民皆保険制」(Medicare for All)の議論を重ねてきた。今となってはさすがに嘘くさく感じられるようになり、サンダースは選挙戦から撤退し、現実論を唱えていたバイデンが残っている。とはいえ、バイデンは党内左派の離反を避けるためにも、この「MFA」を公約にしていかなければならない。

〇いくらアメリカが分極化しているからと言って、二大政党が方やオバマケア撤廃、方や国民皆保険制を唱えている。しかるに目の前にあるのは、新型コロナ感染による多数の死者と医療崩壊である。予想される死亡者数は以前は「10万人から24万人」と言われていて、最近ではトランプ大統領が「6万人から6万5000人」とやや楽観的な数字を挙げ始めたが、それにしたってベトナム戦争の死者数(5万8209人)は越えてしまう。

〇なんだかこれを機会に、アメリカが一気に社会主義に向かっても不思議はないような気がしてきた。これだけ大勢人が死ぬと、さすがに歴史は変わりますから。

〇ところでこのサイトを作っているFさんは、実はとっても忙しい人なのです。よくまあ本業の傍らで、こんな手間のかかることをやっておられますねえ。敬服いたします。不肖かんべえが、この溜池通信をダラダラと続けているのとは値打ちが違うのです。

〇ということで、是非このまま継続してください。原点へのリンクも張ってあって使いやすいし、米労働市場に関する問題を広範囲にわたって取り上げてある。ホントにありがたいサイトです。

 

<4月20日>(月)

〇今日はこの記事を見て笑ってしまったな。アメリカにおける経済活動正常化(Openning Up America Again)の動きについてです。分極化の極みにあるアメリカ、「いつになったら、外出禁止を止めて平常モードに戻れるか」も党派色を帯びてしまう。もっとはっきり言っちゃうと、選挙運動になってしまうのですね。

州別動向をみると、外出禁止措置解除に向け指針を発表したカリフォルニア州など民主党知事率いる10州は、経済活動の再開に向け連携済みです。中西部と南部でも17日、民主党や共和党の知事を問わず7州、ミシガン州(民)、オハイオ州(共)、ウィスコンシン州(民)、ミネソタ州(民)、イリノイ州(民)、インディアナ州(共)、ケンタッキー州(民)が再開で結束しました。感染者数のピークアウトを確認すると同時に新規失業保険申請者数の急増もあって、徐々に再開へ向けた道筋が固まりつつあります。

経済活動再開へ向けた動きは、ミシガン州で展開していた外出禁止反対デモが影響した可能性も。ミシガン州のホイットマー知事は民主党大統領候補の指名が固いバイデン氏の副大統領候補として有力視されるだけに、トランプ氏が横やりを入れるのも納得ですし、民主党知事が配慮してもおかしくありません。

共和党知事を擁するフロリダ州では、ホワイトハウスが経済活動再開に向けた指針発表後の翌17日、一部ビーチに対し時間限定のリオープンを承認しました。ワシントン・ポスト紙はビーチに集まる人々を指し#FloridaMoronsのハッシュタグが流行中と指摘してましたっけ。

〇トランプ大統領は、民主党の有望株であるミシガン州知事には喧嘩を売り、フロリダ州知事は「愛いやつ」とみなしているのかも。そのフロリダ州は、ビーチで海水浴する人が出てきて、#Florida Moron と呼ばれている。Moron(愚か者)とは言葉がきつい。おそらく批判する側としては、Fool(馬鹿)Stupid (間抜け)では全然足りないと感じたのでしょうね。

〇なんとなれば感染症とは、「他人の健康状態が、自分の健康に直接影響する」ものだから。ヘビースモーカーが肺がんになるのは本人の勝手だが、周囲の人が迷惑するわけではない。(それにしたって受動喫煙や保険料の上昇という問題はあるのだが)。その点、感染症はまったくシャレになりません。他人の愚行にも、笑えるものと笑えないものがあります。

(追記:そういえばわが国には「江の島Morons」がおりましたなあ。いずこも同じか。読者の方から、「そういえばレックス・ティラーソン元国務長官が、トランプ大統領をMoronと呼んでいましたね」とのご指摘あり。そう、そうだった。とにかくFoolやStupidでは足りないときに、この言葉が使われるようです)

<4月21日>(火)

〇今日は久々に都内へ。ますはテレ東で「モーサテ」出演。テレ朝で感染者が出たこともあり、局内は非常に緊張感あり。出演者は2交代制となり、スタッフの数も絞り込んでいる。この人たち、よくやってるよなあ、と感心する。

〇こんな日に、「NY原油、初のマイナス圏」という途方もないニュースが飛び込んできた。5月分のWTI原油先物価格がなんとマイナス37ドルに。そんな馬鹿な。インタビューを受けた高井裕之さん(住友商事ワシントン所長)が、「酪農家が売れ残った牛乳を捨てているようなもの」と、絶妙な解説をされていました。日糧1000万バレル程度減産したところで、需要の落ち込みの方がはるかに激しいので衆寡敵せず、ということらしい。

〇番組終了後は浜松町に移動して「くにまるジャパン極」へ。こちらも先週からスタジオが12階のホールに移動して、とっても広い場所で少人数にて放送を行っている。今日の「深読みジャパン」のテーマは、「10万円給付」で異例の組み換えとなった補正予算について。ちょうど先週の放送で、「減収世帯に30万円という案はよろしからず。定額給付の方がいい」と言っていたのだが、まさかその通りになるとは思いませんでした。

〇全世界のリモートワーク族よ、どうかStay safe and stay healthy. いつの日か、「あの時はひどかったよねえ」と一緒に笑える日が来ることを信じて。

<4月22日>(水)

〇今週号のThe Economist誌は、Covid-19関連の記事はフリーにします、と宣言している。だって全世界が必要としているでしょ、ということである。その意気やよし。長年の読者として申し上げると、世の中がひっくり返るようなこと――9/11とかリーマンショックとか、今回の新型コロナといったことが生じたとき――この雑誌の論考はいつも感心させらます。

〇で、今週号のカバーストーリーは“Is China winning?”(中国が勝つのか?)である。これは外交専門家の間で流行の議論で、戦争や大きな自然災害があった後には国際関係が変わる。ひょっとしてアメリカの指導力が低下して、これから中国の時代が来るんじゃないのか。これはよくある議論だが、The Economist誌は「そうじゃないだろう」としている。

〇確かにアメリカときたら、「WHOにもうカネは払わん!」などという低次元な腹いせをやっている。トランプ政権下のアメリカは、エイズやエボラ熱のときのように世界を先導するつもりなどさらさらない。その点、中国は他国に先駆けて疾病を封じ込め、全世界にマスクを配ったりしている。これでは「地政学的転換点」になっても不思議はない。

〇ただし、そうはならんだろう。まず、中国がそんなに上手くやったかどうか、われわれには確認のしようがない。ごまかしがあるかもしれないし、台湾や韓国のような民主主義国の方が対処は優れていたのではないか。(ここで日本の名前がスルーされるのは当然だが、ちょっと寂しい)。これから先に中国経済が復調するかどうかだってよくわからない。

〇しかも、中国のプロパガンダはまことにウザい。他国の悪口を言うし、「病原菌アメリカ発生説」みたいな陰謀論もほのめかす。逆に西側先進国は、中国に対する猜疑心を深めている。それに中国は、アメリカに代わる力を有しているとは思われない。中国にはグーグルもなければハーバード大学もない。というか、本気で世界のリーダーを目指しているのだろうか。

〇おそらく中国は、世界の経綸を担いたい、などとは思っていない。今の秩序を維持するだけで結構で、そこで中国が邪魔されることがなければいい、と割り切っているのではないか。トランプのアメリカは確かにお粗末だが、その後釜が中国だったらこりゃあ悲劇である・・・てなことを言っておる。うむ、まとめかたが少々カジュアル過ぎたかな。真面目な読者は、ちゃんと原文に当たられますように。

〇で、ワシが思ったのは、「中国のプロパガンダは国内向け」だということである。「わが国は共産党の指導のよろしきを得て・・・」というお題目は、聞かされるほうはいい迷惑である。特に国内が阿鼻叫喚の状態になっている今の欧米諸国にとっては。ただし、あれは国内向けに言っているのだと思えば、そんなに腹は立たない。

〇中国の外交官が、出先の大使館から「わが国の対応は素晴らしかったのに、西側政府の対応は見ちゃいられない」みたいなことを言うのは、あれは北京のお偉いさん向けに向けてアピールしているのであって、さすがに本気で言っているわけではないだろう。そうでないと、14億人が収まらなくなるかもしれないのだ。

〇ちなみにThe Economist誌はマジメに心配しているようなのだが、中国が最貧国向けの債権を減免して、全世界に向けて恩を売る、なんてこともあり得ないだろう。それをやったら、中国国内では「なんでそんなムダ金を使うのだ!」という民草の怒りの声が、澎湃として起こるはずだからだ。(そういえばベネズエラ向けの債権って、どうなったんでしょうねえ。石油で返してもらうと言っても、その石油価格はどえらいことになっているわけで・・・)。

〇The Economist誌はまことに辛辣で、こんなことも言っている。“In the past China has haggled over debt behind closed doors and bilaterally, dragon to mouse, to extract political concessions.「かつての中国は債務国に対し、二国間だけの密室において、龍がネズミを睨みつけるようにして政治的譲歩を迫ってきた」と。まあ、確かに「徳」のない国なのです。もっとも今の世界は、どこを見渡しても「徳」なんてありませんけど。

<4月23日>(木)

〇なんで石油価格のマイナスなんてことが起きるのか。ワシも今回初めて知ったので、そのカラクリをご紹介しておきましょう。

〇NYMEXで取引されているWTIというのは先物価格であって、今回マイナスになったのはその5月限という分。現物の引き渡し日は4月21日で、ロングしている投資家は当日になったら、オクラホマ州クッシング市というところへ現物を取りに行かなければならない。しかもどんな油種を渡されるかは、その場に行ってみないとわからない。

〇引き取った現物の原油は、タンクローリーか何かに積んで持ち帰らなければならない。どこかのタンクに預けておければいいのだけれども、今は備蓄用タンクはどこもパンパンの状態で、引受先がないらしい。そうなると、テキサス湾岸にあるどこかの製油所へもっていくしかない。

〇そこで先物を買っていた投資家は、「おカネをつけるから誰か何とかしてくれ~!」ということになったのでしょう。何しろ原油は捨てるわけにいかない。ただの金融商品だと思っていた投資家は、さぞかし驚いたことでしょう。これは嵌めた側が、「お見事」ということになります。

〇それにしても困ったもので、石油が売れない。世界で消費される石油は日量1億バレルといいますけど、OPECプラスが決めた減産量はその1割程度。需要の方はどれだけ減っているか。ガソリンやジェット燃料の需要を考えれば、2割、3割減は当たり前。需給を考えれば、石油価格がすぐに上がるはずがないのである。こうなると「地政学リスク」なんぞも出る幕がない。

〇トランプ大統領は、「サウジからの石油禁輸」などと口走っておりましたが、これもできない相談なのです。なんとなれば、米国産は軽質油でサウジ産などは重質油。テキサス湾岸などにある製油所は、輸入する重質油対応である。だからアメリカは軽質油を輸出して、サウジ産の重質油を輸入しなければならない。これが米国における「エナジー・インディペンデンス」の実態です。だいたい皆が困っているときに、「自分さえ良ければ・・・」と考えることは、得てして失敗するものであります。

〇などと偉そうなことを書いておりますが、本日「岡江久美子?それって『あみん』の人?」と口走って、オバゼキ先生にたしなめられたのは不肖かんべえである。しょうがないじゃないか。「はなまるマーケット」なんて知らないんだもの。まあ、「連想ゲーム」の記憶はあるので、多少恥ずかしくはある。

 

 

以上、吉崎達彦(かんべえ)先生のブログ 4/19~4/23

 

※ WTIはウエスト・テキサス・インターミディエートの略で、西テキサス地方で産出される硫黄分が少なく ガソリンを多く取り出せる高品質な原油のことを指す。そのWTIの先物が、ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されている。