台風15号による ため池メガソーラー火災

国内最大の水上メガソーラー

台風15号が千葉県を通過した9月9日午後、千葉県市原市のため池「山倉ダム」の水面にある「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」で

火災が発生した。台風の強風で、フロート架台が折り重なるように損壊し、その複数個所から発火し、炎と煙が立ち上った。

消化活動のNEWS動画

 同発電所は、水面に浮かべた太陽光パネルの出力は約13.7MWに達し、水上設置型の太陽光発電所では国内最大となる。2018年3月に運転を開始していた(↓図1)。

 

 市原市消防局に火災発生の通報が入ったのは9日午後1時、現場には消防車7台、消防員21人が出動して消火に当たった。出火箇所に最も近い北側の岸から放水した。通常の消防車の放水距離(20~30m)では届かなったため、放水距離70~100mの能力のある大型放水砲搭載車(DHCU)を使って放水し、午後3時24分に消し止めたという。怪我人はいなかった。 太陽光パネル火災への放水では、棒状の注水になった場合、消防員が感電する恐れがあるとされる。今回は、池の水をくみ上げて放水したが、消防員に感電はなかったという。放水距離が長く、放水先では水が霧状になったことも感電リスクを下げたと思われる(↓図2)。

午前中には稼働停止

 被災した水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)は、東京センチュリーと京セラが共同出資する京セラTCLソーラー(東京都千代田区)が発電事業者となっている。山倉ダムは、千葉県企業庁の管理する工業用水専用のため池で、水面約18万m2を賃借し、5万904枚の太陽光パネルをフロート式架台に設置した。

 連系出力は11.5MWで、固定価格買取制度(FIT)を利用し、東京電力エナジーパートナーに売電している。設計・施工は京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が担当し、パネルは京セラ製の出力270W/枚の製品、パワーコンディショナー(PCS)は、ドイツのSMAソーラーテクノロジー製(500kW機)、フロート式架台はフランスのシエル・テール製を導入した。維持管理は、京セラソーラーコーポレーションが担当している。

 京セラ・広報担当者によると、9日未明に台風15号が千葉県を通過した後、日の出とともに「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」に異常の発生したことを遠隔監視システムなどで察知し、午前中には稼働を停止して、送電系統から解列させたという(↓図3)。

 同社では、現在、原因の調査・分析を急いでいるが、「一般的に太陽光発電所は、稼働を停止しても太陽光パネルに日光が当たると電流が発生するため、損傷による漏電などで発火する可能性がある。今回もそうしたケースかもしれない」(京セラ広報部)としている(↓図4)。

「島」が3つに分断

 「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」は、もともと約5万枚の太陽光パネルをフロート架台に固定して連結させ、1つの大きな「島」を形成して、池の北側に浮かべていた。

 被災後の状況を見ると、この「島」が3つに分断され、そのうちの「最大の島」が北側の岸に向かって押し流され、一部が岸にぶつかって止まっている。流された部分は、「島」全体の3分の2程度にもなると思われる(↓図5)。

同発電所では、パネルの「島」が風で移動しないように、フロート架台を400本以上の係留ワイヤーで、湖底に固定したアンカーに繋いでいた。アンカーの引き抜き強度を確保するため、試験施工を繰り返した上で、施工したという。最大風速41.5m/秒にも耐えられるよう係留ワイヤーの強度を確保したとしていた。 今回の台風15号では、千葉市で最大瞬間風速50m/sを超える強風を記録していた。山倉ダムでも、池を囲む並木の一部が南側に倒れたり、太い枝が折れたりしていることから、最大瞬間風速は50m/sを超えていた可能性がある。こうした想定を超える強風に一部の係留ワイヤーとアンカーが耐えられずに損壊して風に押され始め、機能しているワイヤーにつながる島部と引っ張り合いになり、ついには島が分断され、糸の切れた凧のように流されたと見られる(↓図6)。

山倉ダムの水深は最大で10mを超える。もともとワイヤーは、季節による水面高さの変動にも対応できるように余裕を持たせている。流された島でも一部のワイヤーが機能していた可能性もあり、その部分が湖底側に引っ張られ、そこを起点に架台が折り重なるように損壊した可能性もある(↓図7)。

 岸に近い島の北端ではフロート架台が下側に潜るように折り重なっているように見える。これは、機能しているケーブルに引っ張られたからとも考えられる(↓図8)。
 

ちぎれた南端は「まくれ上がり」

 一方、分断された島の南端では、強風でフロート架台がまくれ上がり、ロールケーキを巻くように上側に折り重なっている(↓図9)。

 これまでも国内の水上メガソーラーでは、台風よる被害があった。例えば、昨年、大阪府大阪狭山市のため池に設置された1.99MWの水上メガソーラーでは、フロート架台が台風21号による強風でまくれ上り、733枚が反り返る形になった。 これまでの水上太陽光発電所の被災では、こうした「島」の端が強風でまくれ上がるというケースがほとんどだった。そのため、その対策として島の外側のフロートに水を入れて重くするなどして、「めくれ上がり」を防ぐ措置などを採用してきた。

 今回の山倉ダムサイトの台風被災では、島端の「めくれ上がり」とともに、係留ワイヤーが機能しなくなり、大規模に「島」が押し流されるという事態になった。今後、係留ワイヤーや湖底アンカーの強度設計をさらに強くするなどの対策が必要になりそうだ(↓図10)。

 2018年3月 完成当時(図11)

 

 ただ、ため池管理者の立場からは、湖底の構造を大規模に改変したくない面もあり、重りを沈めて係留ワイヤーをつなぐケースもある。勢力の強い台風が頻繁に上陸するなか、水上メガソーラーの安定運用には、施工面の工夫や技術革新が期待されそうだ。

以上、金子憲治=日経BP総研より、引用終わり

 

 

水上のソーラーは、野立て(陸上設置)と異なり、樹木伐採除草地均し整地・雨水用傾斜・排水溝不要という利点がある。

その反面、水位の変化や、風・波の影響を考慮する必要があり、

メンテナンスは、に乗って行うか、ドライ(池の水を抜いた状態)で行う。

土地の権利関係で言えば、水利組合との水上賃借権という権利が絡んでくるが、

日本は瑞穂の国(稲作国家)なので、水利権の及ばない土地が殆ど無い。

また、屋根に取り付けるソーラーが、建物の耐用年数を考慮する必要があるように、池の場合、バンク(堤体)の耐力を考慮する必要がある。

また、ステンレスワイヤーで繋留するということは、テンションだけで、水平方向一方向の変移を抑えるということで、

岸に押し付けられたりすると、二方向から押し付けられる力が加わり、まるで、諏訪湖の御神渡り(動画)↓のように、パネルが膨れ上がることになる。

上記、「千葉・山倉水上メガソーラー発電所13.7Mw」では、フランス製の架台を使用して、

最大風速41.5m/秒にも耐えられるよう係留ワイヤーの強度を確保したということだ。

仮に、調達価格が55万円/Kwhなら、撤去費用を15万円/Kwhとして、今回の被害は70万円/Kwhで、ざっと96億円(全損の場合)に達し、

再設置の期間は、FIT期間から引かれるので、再設置したとしても、その間のロスタイムを考えると、

被害総額は120億円(1/3としても40億円)を下らないだろう。

 

 

 

太陽光パネル火災への放水では、棒状の注水になった場合、消防員が感電する恐れがあるとされるのは、

アメリカのメガソーラー火災で、放水中の消防士(Fireman)が感電死するという事故が実際にあったからだ。

太陽光パネルは、太陽電池と呼ばれることもあるが、ソーラーパネルは、バッテリーではなくて、蓄電機能が無い。

光が当たると、2つの極に電位差を生じ、それを集電して、直流電流のまま、PCS(パワコン)まで高圧高電流が行く。

だから、柱状の放水から感電する恐れがあるのだ。

昨年の台風21号による強風で、大阪府狭山市の水上ソーラーも被害に遭ったというが、

実は、アーサーバイオでも、2013年ごろ 大阪府南部のため池で、ソーラー計画を立てた事があった。

僕は、25万円/Kwh(パネル・PCS・繋留ワイヤ込)の自作フロート架台を設計した。

水利組合や、仲介者の利害調整段階で計画が頓挫したお陰で、アーサーバイオ設計製作のフロート架台は陽の目を見なかった。

北側を上げて、南に10°程度の流れ(傾斜)をつけると、風圧耐力は、下がる。

多結晶シリコンパネルを使い、傾斜を取らず、水平に敷き詰める方法もある。

上記「千葉・山倉水上メガソーラー発電所13.7Mw」のフランス製フロートは、

サイドに底辺のある三角柱になっていて、北側にエアポケットが無く、しっかり設計されているし、「島」は北に流されている。

それでも、最大風速41.5m/秒にも耐えられるよう係留ワイヤーの強度を確保したというのは、どうなんだろう?

建築でも土木でも、設計段階で、安全率という設計思想がある。

例えば、エレベーターで、定員10名と表示されている場合、

65Kg/人として、ロープの強度は、65Kg×10名=650Kgに、

安全率10を掛けて、6,500Kgに耐えられるように設計する。

人間を運ぶエレベーターなどの安全率は10で設計する(建築基準法)。

台風や積雪などの天災に備えて、国土交通省が出しているソーラー架台の技術基準に基づき、構造強度計算をするが、

国内のエリアごとに、風速~35mだとか、積雪~40cmというような許容応力度が設定されていて、それを守っている場合、

現実に災害が起き、100億円単位の被害が出てしまっては、

法的には、危険負担の問題であり、引渡した後の天災で、100年に1度級の、

風速50m強の台風が直撃した事については、ゼネコンにも、フロートメーカーにも、責任があると言えない。

 

 

沖縄野立てのメガソーラー発電所計画は、全て風速50m級の風が吹くことが想定されるので、アーサーバイオは計画段階で参入を断念した。

大阪府南部のため池で、ソーラー計画を立てて、自作フロート架台を設計し、結果的に頓挫した。

沖縄案件ため池案件参入しなかったことは、アーサーバイオにとっては、結果的に良かったのだろう。

三重県で、海岸から500m・海抜3mのところに、アーサーバイオが注文設置したソーラー発電所が、6.9Mwある。

三重県海岸線エリアの津波保険枠は一杯で、津波災害を担保する保険に入ることができないし、

もし入ることができても保険料が高く、保険金は実損の50%が免責となる。

何とか、FITの期間だけでも、津波災害(東南海地震)は来ないで欲しいと祈る以外にないのだが、

考えてみれば、車や飛行機で移動するのも、道を歩くのも、人間活動は一定のリスクをとらないといけない

蚊だって、叩き潰されるリスクを冒して、血を吸いに来る。

海岸から500m・海抜3mのところにあるアーサーバイオが設置したソーラー発電所:6.9Mw(赤枠)

正常性バイアスという言葉がある。

正常バイアス(せいじょうせいバイアス、英: Normalcy bias)とは、認知バイアスの一種で、

社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語。自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のことだ

自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい

都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる

 

僕らは、100年に1度級の台風・洪水にも、1000年に1度級の大地震・大津波にも、遭遇してしまった。

リスクヘッジのラインを、オフサイドトラップ(サッカー)のように、上げる事も時には必要だが、

ラインを上げるばかりでは 生きて行けないので、僕は、

人間活動は一定のリスクをとらないといけないと考えている。

 

災害に遭って、運よく生き残ったら、オロオロ歩くのがいいのではないか?

 

 

 

                          記:野村龍司

 

 

 

 

 

 

過去の太陽光発電についてのエントリー まとめ

 

FIT と EARTHOR(2019.6.6)

 

太陽光発電の過積載について(2017.9.16)