「死して屍 拾う者無し」

かんべえ先生の溜池通信より

以下すべてコピペ

<3月12~13日>(火~水)

○火曜日、内外情勢調査会の仕事で三重県松阪市へ。

○松阪市は昔は「松坂」だったそうで、それが「松阪」になったという経緯は大阪に似ている。なんで土へんよりも小ざとへんが好まれるのかは、よくわからない。ご存知の方がいらっしゃいましたら、どうぞ教えてくださいまし。

○松坂城を築いたのは、戦国時代の名将、蒲生氏郷であった。蒲生氏郷は近江の出身であったから、近江商人を大勢連れてきた。それで城下町が栄えたのだそうだが、その中から後年になって三井家が江戸に進出して、今日の三井グループの始祖になったのだとか。越後屋よ、お主もワルよのう。

○三重県では、地元地銀である三重銀行と第三銀行が合併して、「三十三銀行」になるとのこと。これ、よく出来たダジャレですよね。なにしろ「三重県」は「さんじゅうけん」とも呼べる。つまり「さんじゅう銀行」と「だいさん銀行」が合併するから「さんじゅうさん銀行」。金融庁よ、どうだまいったか。

○これは最近、講演会でよく使うダジャレなんですが、来年のアメリカ大統領選挙で、困ったことに民主党からの候補者が2ダースもいます。それ以上にもっと問題なのは、その中に3ダース(サンダース)がいることなんです。いや、われながらあまりにもくだらない。英語にもできないギャグである。でも、確実に笑いが取れるところなのであります。

○そんなことで松阪市に一泊。水曜日の朝になって、午前8時半の電車に乗らなければいけないところを、1時間くらいだけ市内を散歩してみた。松坂城の石垣が見えるところまでは行ったのだけれども、それで電車に乗り遅れるとお昼の約束に間に合わなくなるので撤退。本居宣長の記念館などがあるようなので、あらためて来てみたいところである。

○そこでささやかながらトラブルが発生。午前8時半くらいの特急列車に乗って名古屋駅に出て、そこから新幹線に乗り継いで12時からの都内の約束に間に合わせる、とだけ考えていたのだが、ワシが松阪駅で乗った電車は(主催者さんが切符を用意してくれた)近鉄特急ではなくてJRであった。なんと松阪駅は2つの会社が乗り入れていて、ホームを間違えても区別がつかないのである。しかもほぼ同じ時間に特急列車がやってくる。

○そうか、関西は同じ条件ならばJRよりも私鉄を使うんですよねえ。これは関東の感覚とは正反対です。東京ではJRの方がエライ。次の津駅で乗り換えるという手もあったようなんですが、乗り遅れるとお昼の約束がアウトになってしまうので、泣くなくJRの料金を払いました。いや、これも勉強であります。あっちこっち訪れることの報酬みたいなものであります。とほほ。

<3月14日>(木)

○昨日の疑問。「なぜ大坂や松坂は大阪や松阪になったのか?」→「それは坂の字が”土”に”返る”を意味するようで縁起が悪いから~!」・・・・いろんな読者から教えていただきましたが、「ボーッと生きてんじゃねえ~よ!」とチコちゃんに叱られてしまった気分であります。※1

○しかし、とワシは思うのであります。この世で万物は土に返るのが世の習い。そうでなくてはなりませぬ。土に返らないプラスチックが迷惑がられる世の中であります。大坂なおみや松坂大輔は、やはり大阪や松阪ではない方がよろしいのではないでしょうか。

○というのは、今宵伺ったミャンマーのお話から。「ミャンマーにはお墓がない」のだそうです。だって仏教国では土に返るのが当たり前だから。お釈迦様だって、その高弟たちだって、お墓はこの世に存在しないのです。

○そんなミャンマーでは、日本から遺骨収集団が来るのがとっても迷惑なんだそうです。かの国はいい意味で、「死して屍、拾うものなし」が常態なので、死んだ人の骨なんて見たくもないのであります。※2

○その一方で、少子高齢化の最近の日本では、「墓仕舞い」がブームになっております。そりゃそうだよね。「永代供養」なんて嘘に決まっているんだから。虎は死して皮を残し、人は死して名を残す。が、名を残す人なんてほとんどいなくって、99.999%の人は忘れ去られていく。それはそれでよろしいのではないでしょうか。

○今は樹木葬やら散骨やら、いろんな方式があるのだそうです。そのうち有望視されているのは「宇宙葬」。これは遺骨をロケットで打ち上げて、地球を何周かしてから最後は大気圏に突入して消えてなくなる。それは地上から流れ星となって見えるのだそうです。ちゃんと流れる日時と場所も特定できるのだとか。これは結構、人気になるかも。

○大坂城を築き、位人臣を極めた豊臣秀吉が残した辞世の句は「露と落ち 露と消えにし我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」。大坂が大阪になって、実はびっくりしているのではないでしょうか。

<3月15日>(金)

○本日は”Beware of the Ides of March!” ――3月15日はジュリアス・シーザーが暗殺された日です。心しなければなりません。でも、税金の申告は昨日済ませたので、正直なところ油断しきっておりました。

○惨劇が起きたのはニュージーランドのクライストチャーチでした。49人が射殺され、48人が怪我をし、4人が逮捕されたとのこと。今回のテロ事件は、2011年の地震と並んで同国の「黒歴史」として記憶されることでしょう。

○クライストチャーチはしばらくご無沙汰しておりますが、かつて何度も通ったことがある美しい街であります。モスクがあるとは知りませんでした。それにしても、こんなことが起きてしまうとは。アングロサクソンの国なので、銃規制は緩いのだと思いますが、危険な犯罪とは縁遠い社会なのでありますが。

○犯人たちが「正しいことをしているつもり」であるという点が、何とも重苦しく感じられます。『ホモ・デウス』によれば、今日の人類は飢饉と疾病と戦争を克服しつつあり、その代わりに目標とするのは不死と幸福、神性の獲得である、とのこと。しかるに現実は、集団ヒステリーや薬物、自己破壊などに逃避する人が増えているだけではないのか。

以上、引用終わり。

 

 

 

※1

ボーッと生きている割に   僕は知っていました。

※2

かんべえ先生や僕は、昭和30年代生まれなので、時代劇TVドラマ大江戸捜査網」(昭和45~59年)の このセリフは共通文化です。

35歳以下の人には何のことか分からないかも知れません。

隠密同心心得の条で、「死して屍 拾う者なし」は、最後にリフレインで来る

謎かけのような 文語体のでした。

隠密同心 心得之條

我が命我が物と思わず

武門之儀 飽くまで陰にて

己の器量伏し

御下命 如何にても果す可し

尚  死して屍拾う者無し  死して屍拾う者無し

「昭和も遠くなりにけり。人は忘れ去られて土に返る。それはそれでよろしいのでは?」

次回のテーマは、「ミャンマーと日本の土の違い」についてです。