今回は、不動産用語の囲繞地(いにょうち)および2項道路(にこうどうろ)について、
僕は宅地建物取引士ですが、正確に理解していなかったので、ここに整理しておきます。※1
↓道路 ↓道路
囲繞地とは、
民法においては、他の土地に囲まれて公道に通じていない土地(袋地)にとって、その土地を囲んでいる土地を言い、
刑法においては、柵等で周囲を囲んでいる土地を言います。
民法と刑法では、囲む主体と囲まれる客体というように、意味が全く異なり、
囲むものは、民法では土地であり 刑法では柵等です。
今回は、不動産用語の相隣関係の一つである囲繞地なので、民法の話です。
囲繞地の所有者は、袋地所有者の囲繞地通行権の負担を負います。
民法210条において、袋地の所有者は公道に出るために囲繞地を通行することができるとされています。
民法中の「公道」とは、一般的に通行できるという意味で私道も含みます。
囲繞地通行権は民法で認められた権利で、最初から公道に接していない土地について定められたもので、
囲繞地の所有者は通行を拒否することができません。
通行する権利があるといっても、囲まれている土地のどこでも自由というわけではなく、
囲繞地の中で通行による支障がもっとも少ない位置で、かつ必要最小限の範囲に限られます。
通行権者(通行する権利を持っている人)は、通行料を支払う義務があります。
また、元々公道に通じていたのに、分筆によって袋地を生じた場合は、
分筆によって新たに生じた囲繞地(元々、袋地と一筆だった土地)が、囲繞地通行権の負担を負います。
民法現代語化を目的とした平成16年民法改正により「囲繞地」は「その土地を囲んでいる他の土地」などと言い換えられ、
法文上「囲繞」の文字は削除されましたが、不動産業界に浸透している用語であり、
これに代わる適切な語句がない為、依然として用いられています。※2
⇒参考:旗竿地
つぎに
2項道路について(有)エイキ不動産ブログより引用
不動産の物件チラシに「セットバック要」・「セットバック有」と書いている例があります。
「set back」は英語で「後退」ですが、不動産のセットバックは、
物件の前面道路幅が4メートルに満たない場合に出てくる言葉で、
前面道路が4メートルに満たない場合、敷地に新たに建物を建てるときには、
道路の中心線より2メートル以上後退しなければいけません。
これをセットバックと言います。
境界線が後退するので、その部分に新たな建物を建てることができません。
そもそも建築基準法では、原則として幅が4メートル以上なければ「道路」として認められません。
しかし、幅員4メートル未満でも、建築基準法施行前から使われていた既存道路で、
かつ特定行政庁が道路として指定したものは建築基準法上の道路とみなされます。
建築基準法42条第2項に定められていることから、
一般的に「2項道路」と呼ばれており、みなし道路とも言います。
この2項道路に面した土地や建物の売買の時にセットバックという言葉が出てきます。
↓物件の前面道路の幅を3メートルと仮定しました。
4メートル未満なので、原則「道路」とは言えず、「2項道路」が出現します。
この物件に新たに建物を建てる場合は、中央線から2メートル分後退した箇所からが敷地となります。
従って、50センチメートルだけ後退しなければいけません。お向かいも同様です。
この緑色の部分(=2項道路)は、建物だけでなく門を建ててもいけないし、植栽もできません。
また、建蔽率を計算するときは、敷地面積から引かなければいけません。(固定資産税も、課税されない筈です)
尚、道路の向いが敷地ではなく河川や崖の場合は、
向いの端から4メートル分の道路幅を確保しなければいけないので、
1メートル分セットバックする必要があります。
この緑色の部分が2項道路です。
結論:「2項道路はセットバックとセットの言葉」です。
「幅員4メートル未満の既存道路に面した土地で、将来4メートル幅を確保する為のスペースが、2項道路」です。
道路の種類については、「不動産実務TIPS」に
建築基準法42条で定められている5種類の道路、および「2項道路」を含む1~6項道路の説明が載っています。
※1
法律用語の理解にしても、学生時代の勉強でも、共通して言えることですが、
全てを100%理解するまでは、次に進まないという勉強法は、効率の悪いやり方です。
だいたい(70~80%)理解したと思ったら、次に進むという進め方で、
できるだけ早く全体を俯瞰してから、細部に戻っておさらいをするのが良い!
全体を俯瞰することで、自分の現在地が分かって、勉強の力の抜き方が分かるのです。
これが分からない人は、コスパの悪い勉強をやるので、勉強が苦痛になります。
2回目以降は「学而」・・・「學而時習之 不亦說乎」・・・「学びて時に之を習う 亦説ばしからずや」
・・・「以前に学んだことのある内容との再会は、勉強が最も楽しい瞬間である」と、孔子先生が曰っています。
だから、僕のような半可通(ちゃらんぽらん)な理解でも宅建(マークシートの四択で70%)は合格します。
資格をとってから必要に応じて実務でやったらいいのだと思います。
「学而」偏には、「吾日三省吾身(中略)傳不習乎」・・・「吾 日に吾身を三省す(中略)習わざるを伝うるか」
・・・「よう知らんことを したり顔で教えてへんか?」というのもあります。
しかし、僕は俗物なので、そのように聖人が曰っていようとも、
不動産業でも新規事業でも研究でも「よう知らんこと」をしたり顔で喋っているうちに、
ビジネスチャンス(新発想)が生まれることがあると思っています。
3月8日追記:次回ブログ末尾の方に、PCRやバクテリオファージのことを、よう知らんのに書きました。
※2
囲繞地(いにょうち)は、表意文字で、一目でイメージし易いから代替語が無いのだと思います。
繞く(しま―く)というのは(縄を張って)取り囲むという動詞で、音では繞(にょう)と読みます。
囲繞は(「巨大」「重複」「表現」などに同じく)類義の漢字を重ねた熟語だったんです。
漢字は難しいですが、実は 小学生のころから使っているもので、主な繞(にょう)には、
.1 しんにょう ;辶 常用漢字: 込 辺 迅 近 迎 返 述 迭 迫 逆 送 退 追 逃 迷 逝 造 速 逐 通 逓 途 透 連 逸 週 進 逮 運 過 遇 遂 達 遅 道 遍 遊 違 遠 遣 遮 遭 適 遺 遵 選 遷 還 避 遡 遜・・・表外字: 辻 迂 迄 辿 迪 迦 逅 這 逍 逞 逗 逢 迸 遁 逼 遥 邁 遼 邂 遽 邏など
.2 かんにょう、うけばこ ;凵 常用漢字: 凶 凹 出 凸 ・・・・表外字: 函 など繞の形をしていないが、便宜上繞扱いされる。(脚に見做される場合もある)
.3 えんにょう ;廴 常用漢字: 廷 延 建 ・・・・・表外字: 廻 など
.4 そうにょう ;走 常用漢字: 赴 起 越 超 趣・・・表外字: 赳 趙 趨 など
.5 きにょう ;鬼 常用漢字: 魅・・・・・・・・表外字: 魁 魃 魑 魍 魎など
.6 ばくにょう ;麦 常用漢字: 麺 ・・・・・・・表外字: 麩 麹 など
その他があります。
凵うけばこが、にょうに分類されるのは、囲んでいるからですが、
上から囲む場合の 「囗」くにがまえ・「門」もんがまえ・「冂」けいぶ は繞に分類されない所を見ると、
漢字の繞は「下を囲む受け皿」なのね。
記:野村龍司