かんべえ先生の溜池通信

かんべえ先生の溜池通信より、すべてコピペ

<1月15日>(火)

○英国議会がEU離脱法案を本日、採決する。日本時間だと明日の未明になるそうだが、これはまあ通らないでしょうな。保守党内に100人くらいの造反票が居るとのこと。それはもう、稀勢の里がこの後、千秋楽まで全部勝って、優勝争いに絡む確率よりも低そうだ。(当欄注:翌16日初場所4日めに引退発表)

○こんな風に状況が悪化してしまうと、普通であれば働くような知恵が働かなくなってしまう。次善の策を唱える人よりも、「出来もしないこと」を堂々と主張する人の方が偉そうに見えるし、得てして議論しても勝ってしまうのだ。その結果がどうなるかというと、もちろん地獄へまっさかさまとなってしまうのだが、こういう例は良くありますよね。太平洋戦争に突入した大日本帝国も、おそらくは似たような状況だったのでありましょう。

○英国としては、ここで国民投票をやり直すしかないと思うのですが、それがなかなかにできない。なぜなら「民意の否定」になってしまうから。でも、2016年6月23日に決まったBrexitって、フェイクニュースやポピュリズムに扇動された「民意」だったかもしれないので、もう1回やって答えを聞いてみたらいいのに、と思います。その方がEU側も納得がいくと思うんですよね。

○離脱派は、「再投票は国民の分裂を招く」と言って反対するのだそうです。それはそうかもしれません。ここでEU離脱をあきらめるような結果になると、「今までの3年間は何だったんだ!」ということになるでしょうし。でも、このままNo Deal Brexitに突入してしまうと、その後は非常に高い確率で親EUのスコットランドで独立運動が再燃し、北アイルランドとの関係も微妙になってしまうだろう。つまりは「国家の分裂を招く」公算が大である。

○どっちが得か、と考えるのは「勘定の人」であって、普通の状況であればそっちに流れるのだが、今みたいな状況だと得てして「感情の人」が勝ってしまう。特に今みたいにSNSで国論が動くような時代になると、「勘定」とSNSは相性が悪いから。気の利いた「ナラティブ」を作って、「感情」を煽る方がよっぽど政治的には楽なのです。「出来て当たり前のこと」を言うよりも、「出来るはずがないこと」を語る方がカッコ良く見えますからね。

○ということで、われわれもあんまり稀勢の里の応援をしちゃいかんと思うのです。え、そっちかよ!ですって? ワシ的にはとにかく、「出来るはずがないことを、あたかも出来るかのような振りをすることの罪深さ」ということを強調したかっただけであります。

<1月16日>(水)

○本日は某政治家さんの昼食勉強会の講師を務める。いつも「今年の日本経済」をテーマにお話しするのだが、最初にお引き受けしたのが2012年であったから、今年で何と8回目である。年年歳歳、参加者が増えてきて、会場の憲政記念会館の会議室も今年は手狭なくらいになっていた。まずはご同慶のいったりきたりである。

○そこでお話ししていて感じたのだが、こういうところへ身銭を切って来ている人は、たぶんフェイクニュースに騙されることもないのであろうな、と。つまりは究極の情報手段はアナログであって、ネットでは伝えられない「ここだけのお話」というものがある。でも、SNSの情報を鵜呑みにしちゃう人もいるので、それがBrexitのような悲劇を生むのでありましょう。デジタル情報を見て「けしからーん!」と怒り出す人たちが、得てして世の中を変な方向に導いてしまうのだ。

○本日はこんなお話をした。最近、厚生労働省の毎月勤労統計調査が問題になっている。2004年から調査が簡略化されていて、その結果として賃金の額が実際よりも低く集計され、失業保険などの支給額が安くなっていた。今になってそれが明らかになったので、過去に遡って追加給付が必要になっている。お蔭で政府の予算案も、見直しが必要になるのだとか。これはもう霞ヶ関の行政機構への信認を失墜させる大事件である。

○とはいえ、統計を使う立場の側から申し上げるならば、これだけ統計にかかわる人員と予算が削られていたならば、そういうことだって起きるだろうなあ、と思うのである。なにしろ2006年から16年の間に、国の統計職員は6割も減少している。それが行政改革の成果とされ、美談となっていた。でも、それで仕事が減るわけではない。厚労省が、東京都内の事業所1400件に対する調査を勝手に3分の1に減らしていたというのも、一概に責められないなあ、と思うのだ。

○「悉皆調査」(しっかいちょうさ)という言葉がある。こんな言葉、知ってる人はかな~り統計に詳しい人だけだろう。つまりは全数調査のことであって、対象の全数を漏れなく、重複なく調査する作業であり、普通に行われるサンプル調査よりも信頼度は高いとされている。それでは「悉皆調査」であれば完璧かと言えば、もちろんそんなことはないのである。

○だれでも知っている悉皆調査に「国勢調査」がある。あれは全国民が調査に応じるというタテマエになっているが、もちろんそんなことはない。協力してくれない人はいくらでもいる。この国に住む200~300万人の外国人も、たぶんまともに答えてはいないだろう。だってボランティアだし、アンケート用紙は日本語でしか書かれていないんだもの。もっといえば、「全国統一テスト」みたいな悉皆調査のときには、得てして現場の判断で「成績の悪そうな生徒は休ませる」といったことが起きてしまう。バイアスが生じる理由はいくらでも考えられるのだ。

○実はサンプル調査の方がそういう「歪み」が生じにくいので、よっぽどマシだ、ってことがある。だったら厚労省は堂々と毎月勤労統計調査を「この地域は爾後、サンプル調査に変えさせてもらいます」と言えばよかった。そこを黙って変えて、なおかつ初歩的な誤りをして、それを10数年間続けてきて、昨年になってこっそり軌道修正をしようとした。それは褒められた話ではない。

○だからと言って、「本来の悉皆調査に戻ってしっかりやれ!」という話になると、ますます現場に不条理を押し付けることになる。皆が不幸せになって、なおかつ統計の信頼度が上がるわけでもない。こういう話って、最近はとっても多いでしょ。だから「けしからーん!」と言って怒っている人が居たら、まずは疑ってかかりましょう。それってたぶん半可通の人たちですから。

<1月17日>(木)

○うーん、案の定、「厚生労働省はきちんと全数調査をやれ!」という結論になりつつあるようです。なにしろ、一度閣議決定した予算を組み替えるなんて話は聞いたことがありませんから、今回の事態は霞ヶ関的には「罪万死に値す」、ということでしょうね。こうなるともう役所としては逆らえませんが、昨日書いた通り、ちゃんと是正を行っていれば結果はそんなに外れるものではない。ワシはサンプル調査で充分だと思うんですけどね。

○今日になって気づいたのですが、毎月勤労統計というデータは、内閣府が作っている「総雇用者所得」にも使われている。1人当たり賃金に、雇用者数の伸びをかけて計算します。安倍内閣では、デフレ脱却の度合いを図る重要な指標として重視していたはずなのですが、これも過去にさかのぼって修正することになるのでしょう。

○ただし昨年、「現金給与が前年比で伸びている」という結果が出た時に、内閣府が月例経済報告などであまり騒がなかったところを見ると、秘かに「あれはちょっと怪しい」と思っていたのかもしれません。その辺、餅は餅屋ですから。といっても、これは買い被りかもしれませんが。

○以前、与党のプロジェクトチームで経済統計について調べていた時に、関係者から「いやもう、統計関連の人員と予算減らしはひどいものです。未来のStatisticianを育てようなんて感じじゃないんです」という話を聞いた。たぶん内閣府や総務省はまだマシな方なんだろうな、と思った覚えがある。今回、図らずもそれが裏付けられたことになる。

○たぶん政府内には「統計なんて端パイの仕事」的な感覚がまだ残っているのでしょう。でも、統計がしっかりしていないことには、エビデンスベースドもビッグデータも意味を成しません。統計は国のインフラです。これからの時代は特に重要になると思いますよ。

<1月18日>(金)

○以下は大いなる反省と自戒を込めて。

○最近になって、同世代人と話しているときに「以前よりもカネの話が増えたな・・・」と感じたのである。いや、それは事実ではなくて、単にワシ自身がカネの話が気になるようになったせいなのかもしれない。おそらく人は加齢とともにどんどん恥知らずになってゆき、「今書いているこの原稿の謝礼はいくらだっけ?」とか、「通帳の残高は今いくらくらいあったっけか?」などと、以前であればまったく関知しなかったようなことが、だんだんと気になるようになるらしい。

○それも不思議なことではなくて、人は若いうちはもっとカネ以外にさまざまな欲を有している。偉くなりたいとか、有名になりたいとか、女にもてたいとか、いろんな煩悩とともに生きている。しかるにそのほとんどが、歳月とともにだんだんどうでもよくなっていく。真面目な話、今さらモテてもしょうがないしねえ。その意味では同じ50代でも、『愉楽にて』の世界ははるかに遠いのである。まあ、どうせフィクションだし。

○ところがカネだけは、「多々ますます弁ず」なのである。ほかの欲望が衰えるにしたがって、人のカネへの執念が深まるのだとしたら、これはとても怖いことではないだろうか。人生の終盤戦に差し掛かって、おのれの成功不成功をカネの多寡で測ろうとすることは、根本的に間違っているうえに弊害がとっても多いのであるが、そのシンプルさにおいて逆らい難い魅力があることもまた事実なのである。

○さらに言えば、年を取るにつれて自分の「生涯年収」の限界がどれくらいかもおおよそ見当がつくようになってくる。そうなるとますます、「それにつけてもカネの欲しさよ」となってしまうのであろう。いや、ここまで来ると今さら大口の資金需要なんてないのだし、気にしないで済むのであればその方がよっぽど精神衛生上はいいのである。

○なぜこんなことが気になりだしたかと言うと、そろそろ個人事業主たる不肖かんべえは、昨年の決算に取り掛からねばならない。ちょうど一斉に、各方面から支払調書が送られてくる時期でもあるし。とはいえ、昨年の必要経費を集計するという作業は、とっても面倒なのである(そういえば昨年は、あまり寄付の類をしていなかったような気がする。これもワシが「ケチ」になっているからであろうか・・・・?)。まっ、今週末はきちんとやるぞ、と自らに言い聞かせるところである。

<1月19日>(土)

○昨日はパレスホテルで、平成30年度「財界賞」「経営者賞」の表彰式があった。

○いつも感心するのだが、7人もの受賞者を発表する際に、主催者である雑誌『財界』の村田博文主幹が、全員の名前と業績を何も見ないでとうとうと述べ上げるのである。プロのアナウンサーでも、なかなかできることではない。いつもどうやっているのか、どれくらい練習しているのか、一度聞いてみたいと思っている。

○でまあ、それは良いのだが、今回は「特別賞」を受賞した宮城まり子さん(学校法人ねむの木学園理事長)が話題を全部さらって行った。それはしょうがないだろう。正直に申し上げるが、まだ生きているとは思っていなかった。確か10年くらい前に、宮城さんの「私の履歴書」を読んだ覚えがある。ねむの木学園も、まだ続いているとは知らなかった。失礼しました、今年で創立50周年なのだそうだ。それはもう「財界賞特別賞」で文句なしであります。

○ということで、御年91歳の宮城まり子さんの挨拶を生で聞けただけでも儲けものであった。賞のプレゼンターは、いつもミスインターナショナル日本代表が務める。2019年は岡田朋峰(ともみ)さんで、青山学院大学の2年生なのだそうだが、何とあの岡田真澄さんのお子さんなのだという。岡田氏が63歳の時に生まれたお嬢さんなのだとか。

○そしたら宮城さんは、受賞挨拶で、「わたし、岡田さんとお付き合いしていたのに!」などと爆弾発言をされるものだから、ほかの挨拶は全部吹き飛んでしまった。いやもう、戦中派のB29を見た世代にはかないません。それにしても、おいくつの時のことだったんでしょうか。もうじき平成も終わるというのに・・・。

○ということで、あまりにもめずらしい経験だったので、ここに書いておきます。うーん、それにしても「宮城まり子とねむの木学園」って、今の若い人はどれくらい知っているのだろうか。

<1月20日>(日)

○本日を持ちまして、トランプ政権はめでたく丸2年になります。明日からは3年目に入るわけでして、もう2年と言うべきか、まだ2年と言うべきか、なかなか悩ましいところであります。

○問題は政府閉鎖がいつまでたっても終わらないし、終わらせる方法も見えてこないことです。衆目の一致するところ、悪いのは議会民主党ではなくてトランプさんの方でありましょう。なぜなら、「不法移民」や「国境の安全」が問題ならばともかく、トランプさんがこだわっているのは「壁の建設」なのです。だって壁って一発ギャグだったはずじゃないですか。「その建設費用はメキシコに払わせてやる!」という。

○ところがその建設費用を議会が認めないもんだから、給与をもらえない公務員がいっぱいいる。これでは洒落になりません。いつも見ているラスムッセンのトランプ支持率もここへ来て下降気味です。最近はワシントンDCのホテルも値段が下がっているそうでして、このままでは景気にも影響が出るかもしれません。

○逆に意気上がっているのが議会民主党で、「アメリカの二階幹事長」ことナンシー・ペローシ下院議長が上手に立ち回っている。特に「政府閉鎖でセキュリティの心配があるから、1月29日の一般教書演説は延期にしましょう」と言い出したのはお見事でありました。一般教書演説は、あれは下院会議場でやるのがお作法ですからね。「議会の権限だから議会が決めますよ」と言われると、ホワイトハウスも手が出せないのであります。

○こんな風にボス猿がボスらしく振舞ってくれると、いつもなら足並みが乱れるはずの民主党内もちゃんと収まっている。オカシオ=コルテスさん一派があらぬ方向に突っ走るんじゃないかと思っていたんですが、今のところはちゃんとグリップが効いている。逆に共和党側がそわそわし始めた感がある。

○トランプさんとしては、「今日はこのくらいにしておいてやるわ!」と上手に引き分けに持ち込まねばならないところです。そこで土曜日に投げたのが、「不法移民の子ら(DACA)に3年間の猶予を与えるから、代わりに壁の予算を認めろ」というタマで、これはまあ予想の範囲内。ただし民主党側はそれには乗ってこない。民主党支持者も、ここは共和党支持者以上に頑固になっておりますのでね。

○くれぐれも「不法移民」の問題ならばともかく、「壁」の話で世論は靡かない。だってあれはネタだったんだから。さて、3年目のトランプ政権はどんなことになるのか。引き続きウォッチしてまいりましょう。

 

<2月5日>(火)

○今宵は年に1度、正論大賞の授賞式へ。今年は西修駒沢大学名誉教授が受賞ということで、何が何でも馳せ参じなければならない。何しろ富山中部高校の先輩ですから。

○開会前に会場に到着し、控室に潜り込んで直接、「おめでとうございます」とお祝い申し上げる。ああ、よかった。開演になってしまうと後は会場はカオスになってしまうので、ちゃんとご挨拶できなくなるかもしれないのである。

○しかも本日はその後が控えている。途中で会場を抜け出してNHK放送局へ。今宵は7時半から「Nらじ」というラジオ番組があって、お題は統計不正問題なのである。

○ここで意外な事実判明。この番組の黒崎瞳アナが富山中部高校の後輩であるとのこと。そこで思わずこういう会話になる。

「何団だったの?」「朱雀団です!」「僕は青龍団でした」「青龍といえば、陸上ボートですね!」

○しょうもない話ですいません。これって同窓生の間では受ける話なんです。ちなみにわが同級生、上海馬券王先生は白虎団でした。

○さて、西先生は何団だったのか。この次にお会いした時に聴いてみることにしよう。

 

以上、「溜池通信」より、引用終わり。

溜池通信は累計1850万アクセス

かんべえ先生こと吉崎達彦さんは、富山中部高校の31期生だと思います。

僕が同29期生なので、1年間は、同じ高校に通っていたことになります。

因みに、ノーベル賞の田中耕一さんは、富山中部高校30期生で、

前回 昭和51年の4月に新築落成した校舎にこの3人が、1年間同時期に通学していたことになります。

かんべえ先生がエラいのは、「溜池通信」をリンクフリー(引用・転載自由)にしていることです。

それと、これだけの質を保って、発信することは思考を鍛えるため良いトレーニングなので、

僕もかんべえ先生に倣って、今後も最低月1~3回ぐらいの更新をして行こうと思います。

 

>>「壁」の話で世論は靡かない・・・「なびかない」という漢字を教わりました。