コンゲーム小説

映画「ピンクパンサー”The Pink Panther(クリック)
 
「百万$を取り返せ“Not a Penny More, Not a Penny Less”など、詐欺師を主題にした物語は、
 
コンゲーム小説というジャンルで、根強い人気がある。※1
 
鼠小僧次郎吉ねずみこぞうじろきち(1797~1832)は、実在の人物で、
 
金に困った貧しい者に、汚職大名や悪徳商家から盗んだ金銭を分け与えた
 
という伝説があり、芝居などで、やはり人気がある
 
上の2つの事例で人気の共通点は、世間(一般庶民の感覚)では、
 
お金持ちというもの裏で何か悪いことをやっているに違いないという思い込みがあって、
 
お金持ちが詐欺事件や盗難に遭うというカタストロフィ(結末)に、
 
庶民が快哉(かいさい)を叫ぶという所だ。
 
 
 
さても積水ハウスが騙されたという、詐欺事件についてである。
 
地面師グループの女ら逮捕 積水ハウス55億円詐欺被害   2018/10/16  by日本経済新聞
 
東京都品川区の土地を購入しようとした積水ハウスが偽の地主にだまされて約55億円の詐欺被害に遭った事件で、
 
警視庁捜査2課は16日、偽の書類を法務局に提出して土地の所有権を無断で移転登記しようとしたとして、
 
土地所有者の女性になりすました職業不詳の羽毛田正美容疑者(63)=東京都足立区=ら数人を偽造有印私文書行使などの疑いで逮捕した。

 

同課は大型の「地面師」事件とみて捜査。事件に関与したとみられる男女計十数人の逮捕状を取得しており、残りのメンバーも順次逮捕する方針。主犯格の男1人は先週海外に出国し、別の地面師事件で収監中の男も事件に関与したとみられる。同課は積水ハウスに対する詐欺容疑も視野に、グループの役割分担や詐取金の流れを詳しく調べる。

土地は、品川区西五反田にある約2千平方メートルの旅館跡地。積水ハウスはマンション建設用地を取得するため2017年4月、仲介業者を介して所有者を名乗る女から土地を買い取る契約を締結。同年6月にかけて計63億円を支払った。

しかし土地の所有権移転登記をしようとしたところ、所有者側の提出書類が偽造と判明。登記申請は法務局に却下され、所有者を名乗る女とは連絡が取れなくなった。

積水ハウスは留保金をのぞく約55億5千万円を実質被害として特別損失に計上し、警視庁に刑事告訴。同庁は女を羽毛田容疑者と特定するとともに、取引に関わった関係者の事情聴取などを進めていた。

事件では、取引事故を防げなかった積水ハウスのコーポレート・ガバナンス(企業統治)の問題も浮上した。

積水ハウスの社外監査役・社外取締役でつくる委員会がまとめた報告書によると、営業担当者が仲介業者に取引を持ちかけられ、約1カ月後には土地の購入を会社として決断し契約。

その後、土地の所有者本人を名乗る人物から契約を否定する内容証明郵便が届き、グループ内からも取引の信用性に疑義を示す情報が寄せられたが、深く考慮されないまま代金の残金49億円の支払いに至っていた。

18年1月の取締役会では事件の責任問題などをめぐり和田勇会長(当時)と阿部俊則社長(同)が衝突し、互いの解職動議が出た。2月に会長に就いた阿部氏はガバナンス強化を優先課題に掲げている。以上、日本経済新聞10月16日電子版

どうして土地取引に長けた筈の積水ハウスが、

コンゲーム(詐欺)に引っかかったのか

アーサーバイオ/アーサー技建としても他人事ではないので

どうして・・・?」を考えてみる。

当たり前の話だが、不動産売買取引の際に、売主と買主が居る。

ところが、売主は所有権者とは限らない

つまり、売主は他人物を売ることができる

売主が仲介業者で不動産業者の場合、他人物売買違法ではない

又、売主が所有権者であっても、

目的不動産に抵当権が附いている場合は

厳密に言えば売主本人のものではない

(抵当権が実行されると抵当権者のものになる)のだから、他人物売買といえるし、

そのような売買行為も、当然違法行為ではない。

要は、売主が自己の責任において所有権移転時までに

現在附いている抵当権を抹消した上で、買主に所有権移転したらいいのだ。

一般的には、売買契約書を締結して10%程度の手付け金を支払い、

残金決済時に、司法書士が旧抵当権抹消・所有権移転(新抵当権設定)を同時に行う。※2

「積水ハウス事件」では、2017年4月の売買契約締結時手付金は20%で

少し多い程度だが、

当該不動産に抵当権が附されていなかった事、

売買契約締結に現れた所有者を名乗る替え玉の本人確認時、

ニセの印鑑証明書とニセの身分証明書(パスポート)と

ニセの登記済権利証に司法書士が騙された事、

「土地の所有者本人を名乗る人物から契約を否定する内容証明郵便が届き、

グループ内からも取引の信用性に疑義を示す情報が寄せられた」

にも拘らず、70%の内金支払いを敢行した事、

70%支払い時に所有権移転を同時履行しなかった事、

(普通は、同時に所有権移転登記をする)

留保金7億5千万を、積水ハウスが預っていた事、

(おそらく、所有権移転完了まで留保しましょうという提案を詐欺師側がしたと思う)

などが、異な(普通じゃない)ところだ。

所有権移転は、司法書士の手続きを受けて、

法務局の土地登記簿の上に登記官が行うのだが、この事件では、

印鑑証明書等の偽造を登記官が見破った

 

僕が此処で思い出すのは、「登記には、公信力が無い1」という言葉だ。

不動産取引を日常的に行っている業者でさえ、

登記簿の所有権者(甲区)が所有者だと考え、

所有権者を名乗る人が現れると、真の所有権者だと思うのだが、、、

法律では、「登記には、公信力が無い2」ので、

違う場合も有るから気をつけてね!と言っているのだ。

日本国は「 おまいら 登記簿に書いてある事が真実だと思うなよ」と言っている、

登記簿の記載は権利のアウトラインであって

真実かどうか国が保証しているわけではないという事。

 

僕がこの事件で思い出した事は、登記に公信力が無いという  その事だった。

そうは言っても、積水ハウスの側に立って弁明すると、

印鑑証明書や身分証明書や登記済権利証(登記識別情報)には、

ウソが記載されているとは思わない(公信力がある筈)という事だ

印鑑証明書や身分証明書や登記済権利証や登場人物までがニセ者だったなんて!

登記に公信力が無いという話とは、鳥居(ちょい)と違う。

積水ハウスは善意の第三者なので、

真の所有権者に何らかの過失があった時

(詐欺師に本物の印鑑証明書や印鑑や登記済権利証を預けていた場合:表見代理が成立する場合など)

詐欺であっても所有権は取得できる

善意の第三者は保護されるのだ。

(真の)所有権者は、売買の結果(詐欺事件であっても、時には)所有権を失う

しかも、所有権者(時に地面師)売買代金をゲトして去っていく

だからこそ所有権者本人確認はちゃんとやってちょうだい!

やっぱり、代金支払いと所有権移転は同時履行にしましょう。

という事を、今回のコンゲームの教訓としておきます。

 

 

 

 

 

 

※2
司法書士は、売主の抵当権抹消登記や売主から買主への所有権移転登記を、売主買主の双方から(代理行為を)受任して行う。
民法では一般に、双方代理を利益相反行為として禁止しているが、
かかる双方代理は、売主買主双方に不利益が無いという理由で許されている、数少ない例外規定だ。
 
※1
コンゲーム小説はコメディータッチにエンタテインメントに仕上げるので、騙されるお金持ちが悪役だったり、
間抜けな詐欺師が、尻尾をちょろりと出したりする。
以下、ウェブ上にヒットしたコンゲーム小説。
 
 
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