サラブレッドにおける18.75%の奇跡

18.75%奇跡の血量 *1と言われ、サラブレッドにおいて、近親交配(インブリード)の理想とされてきた。

理論上両親からは、遺伝子をそれぞれ50%づつ受け継ぐことになる

以下、2代前の先祖:祖父母が全部で4頭。それぞれ(の遺伝子)を25%受け継ぐ。

3代前の先祖8頭からはそれぞれを12.5%

4代前16頭からはそれぞれを6.25%、

5代前の先祖32頭からはそれぞれを1/32=3.125%受け継いでいる。

つまり、1代経るごとに 血量は半分になっていく。

オルフェーヴル(2011年三冠馬)の例で言えば、

父系の4代前(6.25%)と、母系の3代前(12.5%)に同じ馬(ノーザンテースト)が居て、

ノーザンテーストの血(遺伝子)が、合計で、18.75%入っている。

短く言えば、4×3のクロスのことだ。

この「×」は掛け算の×ではなく、4代前と3代前を掛け合わせた近親交配という意味なので、

計算式は、1/2の41/2の3乗=1/16+1/86.25%+12.5%18.75%となる。

但し4代前と3代前は必ず 父系と母系に分かれていないとバランスが悪い

なぜなら、仮に 父系または母系の一方に偏ると、一旦3×2=12.5%+25%=37.5%を経由することとなり、

37.5%の濃すぎる配合を1/2に薄めただけになってしまうからだ。

例外があって、ノーザンテーストは、レディアンジェラの2×337.5%で、

ノーザンテーストの仔は、全てレディアンジェラの3.418.75%となる。

(ここで3.4の「.」は小数点の意味ではなく「and」という意味で、クロスが父方か母方の一方に偏在するということを示す)

4×3のクロス目標とした馬の配合は、ジグソーパズルピースを嵌めていく作業に似ていると思う。

 

以下、実際に4×3or3×4のクロスで18.75%の血量を持つ名馬 10

馬名    生年               ()内は18.75%のクロス     主な勝ち鞍:

トキノミノル1948       (ザテトラーク)         主な勝ち鞍:皐月賞・日本ダービー、10戦全勝、レコード7回

コダマ1957        (ブランドフォード)       主な勝ち鞍:皐月賞・日本ダービー

トウショウボーイ1973   (ハイペリオン)        主な勝ち鞍:皐月賞・有馬記念・宝塚記念

サクラユタカオー1982   (ナスルーラ)           主な勝ち鞍:天皇賞秋

マックスビューティー1984 (ナスルーラ)           主な勝ち鞍:桜花賞・オークス

タニノギムレット1999   (グロースターク)      主な勝ち鞍:日本ダービー

ブエナビスタ2006    (ニジンスキー)       主な勝ち鞍:桜花賞・ヴィクトリアマイル・天皇賞秋・ジャパンカップ

フランケル2008     (ノーザンダンサー)     主な勝ち鞍:2千ギニー、14戦14勝

オルフェーヴル2008   (ノーザンテースト)     主な勝ち鞍:皐月賞・日本ダービー・菊花賞・有馬記念2回・宝塚記念

レイデオロ2014      (ミスタープロスペクター)  主な勝ち鞍:日本ダービー・天皇賞秋

上の、マックスビューティーブエナビスタ牝馬で、他8頭は牡馬 

 

さて、上記10頭は、いずれも4×3のクロスだが、それ以外にも18.75%の配合は可能だ。

つまり、上記サクラユタカオー1982 (ナスルーラ)とマックスビューティー1984 (ナスルーラ) との間で、仮に子供が産まれたら、

ナスルーラ4.5×4.5となり、1/16+1/32+1/16+1/3218.75%で、ナスルーラ18.75%ができる筈だ。

現実には、マックスビューティーはイングランドで繁殖生活を送り一度もサクラユタカオーを配合しようと試みた形跡がない。

驚いたことにこの配合シミュレーションの結果生まれる馬は、プリンスリーギフト3×4=18.75%のクロスとなる。

なんと美しい(架空の)血統書でしょう

 

仮に、18.75%の血量が真に最高であるなら、

プリンスリーギフトの3×4=18.75%にしてナスルーラの4.5×4.5 =18.75%という

完璧な血統のサラブレッド*2 を作ることができる。

現実には、サクラユタカオーマックスビューティーも、上記シミュレーションのようなインブリードを避けて、交配した結果、

それぞれの産駒は芳しい成績を残していない。(マックスビューティーは、アイルランドで繁殖牝馬として余生を過ごした。ウォッカと同じ)

 

成功した種牡馬ネアルコ1935(14戦14勝)セントサイモン(サンシモン)4.5×4.5 =18.75%で、

現代のサラブレッドの半数ネアルコの血が入っているといわれる。

名伯楽といわれたフェデリコ・テシオは、

ネアルコの配合を意図的セントサイモン4.5×4.5 としたに違いない

 

近親交配(インブリード)は、その共通の祖先の能力を大きく引き出すことができるといわれる反面

濃すぎる血虚弱体質気性難など弊害もあるといわれる。

18.75%よりも、濃すぎても、薄くてもよくない

そのぎりぎりのバランスが、この奇跡の血量18.75%と考えられている

サラブレッドでは、クロス(近親交配)を使って、遺伝子が希釈されないようにしている。

遠い先祖の遺伝子に、近親交配父母という双つのレンズを使って、

再び先祖の名馬に焦点を合わせ、名馬が復活することを望遠鏡効果という。

 

最後にアウトブリード(異系交配)でも名馬は多くいるということを、付け加えておかねばならない。

例として三冠馬ディープインパクトナリタブライアン五代遡ってもクロスが無い

そして、ディープインパクト(や、その父のサンデーサイレンス)は、種牡馬として成功しているので、

近い将来サンデーサイレンスディープインパクト3×4(18.75%)4.5×4.5(18.75%)が出現して、

大活躍するのを、僕らは見ることが出来るかもしれない。

 

事ほど左様に肉体は老化を免れない遺伝子時空を超えて(肉体を乗り物として)未来に旅をする

逆の言い方をすると肉体は遺伝子のvehicle(伝達手段)に過ぎず そこに精神は存在しない!

 

 

 

*1「奇跡の血量18.75%」の最初の論文は、1940年代のアメリカ『ブラッドホース』誌に、1万頭以上のサンプルを基にした理論として発表されたM・S・フィッツパトリックとL・A・ラックブーによる共同研究であり、2人の名前からフィッツラック繁殖説と名付けられた。

それ以前にも、17代ダービー卿フェデリコテシオが、血量18.75%を目標にインブリードの配合をした形跡があるので、

理論自体はフィッツラック繁殖説(1940年代)よりも古くからあった筈だ。

 

*2 完璧な血統のサラブレッドというのは、意図的な二重表現で4.5×4.5がまさにそれだ

 

追記

ハギノカムイオーは、ナスルーラの3×5.5=18.75 %だった。

つまり、ハギノカムイオー×マックスビューティーの仔でも、ナスルーラの4.6.6×4.5=18.75%だった。

   牝馬歴代最強と言われるテスコガビー1972生 桜花賞・オークス他全7勝・・は、

  ナスルーラの3×4にしてネアルコの5.5だったが、5才になったばかりの1月に死亡した。

  テスコガビー全妹のテスコエンゼルにサクラユタカオーかハギノカムイオーをつけると、ナスルーラの18.75%となるはずだったのに、

  テスコエンゼルにはサクラユタカオーではなく、サクラチヨノオー(マルゼンスキー産駒)をつけている。

  これでは「配合に思想が見られない」と言われても仕方が無い。