高速で流れる液体(水など)の中の圧力の低い部分が気化して、非常に短時間に蒸気のポケットが生まれ、
また短時間でつぶれて消滅する現象のことを、キャビテーション;Cavitationと呼びます。
日本語では「空洞現象」という訳語がありますがあまり使われません。
探せば、身近に起きています。
船が進んだ後に出来る航跡もキャビテーションの産物です。
ホースで水を撒く時に、ホースが捩(よじ)れたり縊(くび)れたりすると、
シューッと音がして、キャビテーションが起きています。
隘路(あいろ)を水が抜ける際に 流速が増し、管径が大きくなったとたんに圧力が解放されて 起きます。
平らな石を 回転させながら(脚注) 水面に鋭角に投げると、 石は空中に飛び出し 水没し・・・を繰り返します。
所謂 水切り;Stone skippingですが、 これもキャビテーションによって 石の上部の水圧が下がり、石が浮上して飛び出すという理屈です。
関節鳴らし;Crackingもキャビテーションと言われています。
関節液中に低圧の空隙が出来て、音が出るのです。
日常生活では、うがいする際、水を口に空気と一緒に含んで、
歯の隙間を通り抜ける間で気泡を剪断し界面をたくさん作って、歯磨き粉を流し出すことを、本能的に知っています。
さて、その利用ですが、
流体の中を進む魚雷や潜水艦は 先端にクビレや細管を作ることで、
泡を発生させて 水中の抵抗を減らすという技術に応用されています。
最速の魚雷は370Km/時にも達するといいます。
タンカーや船の接水部分にも、船の先端から泡を発生させて抵抗減少・燃料節約やスピードアップを図っています。
流体が管内を抜ける際に、毛管;capillaryを設け、 次に管径を拡げて圧力を解放するやりかたは
液体冷媒を気化させるために、エアコンなどで使われています。
船舶や潜水艦では、壊蝕;erosionによって スクリューの損耗が激しく、概して 負の部分が強調され勝ちですが、
高圧洗浄機はこの現象を利用して、洗剤を使わずに 驚く程 汚れを落とします。
キャビテーションやナノバブルの応用;aplicationはこの他にも 広範囲にあります・・・・・
発生した泡の消失(圧壊)時に、局所で数千Vの電圧と6000℃の高温が発生します。
IDEC社のウルトラファインバブル発生装置GALFのしくみ↓
アーサーバイオでは、Ultra Fine Bubble(超微細気泡)を IDEC社との技術提携の下、
土壌汚染物質の原位置分解や、農業のベンチ栽培に応用しております。
脚注
石に方向性を与えるということで、円盤状の石を水平に持ってサイドスローで縦軸回転を加えて投げるのがコツですが、
ライフルや拳銃の砲身の内側に螺旋の溝を切って、弾を回転させながら飛ばすことで弾の空中姿勢を保つのと同じ理屈だろうと思います。
真珠湾攻撃をした際には、浅い湾内で 水面に対し魚雷が鋭角で入水するので、フィンをつけて飛び出さないような工夫をしました。